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フランス人ジャーナリストの名誉のために、まずは良い体験の方から(*^^*)


確か1990年代の日本でのことでした。

当時フランスでけっこう人気があった週刊誌のジャーナリストが通訳を必要としているということで、インタビューに同行しました。


まずはある学者さんへのインタビューで、アポを取ってお話を伺いに。

方向音痴の私は学者さんのお宅に着くまで、この道で大丈夫かな?とか、そわそわしていたのですが、中年のジャーナリストは終始余裕でにこにこしていました。


幸い無事お宅に到着し、インタビューが始まると、にこにこしていた記者は突然真剣な表情でメモを取り始めました。


取材は無事終了。


その後、町で商店やいろいろな人に話を聞きたい、と。


夕方で買い物をする人もそれなりに多く、記者はにぎやかな街を、再びにこにこして眺めていました。

私は、ある八百屋さんが興味深げにこちらを見ているのに気づき、「あの人にインタビューしてみましょうか。」と聞きました。

すると、彼はやはりにこにこしながら

「いや、ちょっと忙しそうだね。彼は今仕事をしているから、邪魔するのはよくないよ。」


ジャーナリストというものは人の迷惑を顧みず、どこにでも飛び込んでいくものだと思っていた私は驚愕しました。


一体この人は何者?この余裕はどこから来るのだろう?


私は別の日、彼にインタビューしてしまいました。


「私はジャーナリストというものは図々しいものだと思っていました。人の迷惑などなんとも思わないものだと。あなたは違いますね。あなたの態度に私は感銘を受けました。あなたはどのようにしてジャーナリストになったのですか?」


今思うと、私の方がずいぶんと図々しいですね!


彼の返事は次のようなものでした。


「自分はジャーナリストとして、必然的に人の邪魔をすることになる。

だから、邪魔するのは最低限にするよう気を付けている。


最初は哲学を専攻していて、博士課程まで進んだ。

ロラン・バルトの授業は最高だったよ。

彼はいつもポケットに手を突っ込んで講義をしていた。

でも、その前に膨大な時間を準備に費やしていることは、自ずと明らかだった。

だから自分も教え始めた時、真似をしたんだ。


ジャーナリズムの世界に入ったとき、ほかのジャーナリストたちはあまりものを知らなくて。

ちょっと話したら、えらく感心されてしまった。

そのうち、編集長になれと言われたんだけど、こちらからひとつ条件を出した。

それは、編集長になっても、世界中を旅して取材をするのは続けさせてほしいということ。

それでこうやって、あちこち行って、いろんな人に会ってる。」


彼はもう引退していますが、今でも時々連絡を取り合っています。



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